自由診療と保険診療は何がどのように違うのか

ノーブルデンタルオフィスの診療体制変更(完全自由診療化)に当たり、少しでもご理解いただければと思い 【自由診療と保険診療は何がどのように違うのか】について書かせていただきました。なお、私は歯科大学を卒業して約25年多くの保険診療を行ってきましたが、決められ保険制度の中で決して手を抜いてはおりませんのでご安心ください。

★日本の保険制度とは
日本の医療制度は、国民のほぼ全員が加入し、国民の誰もがいつでも病院にかかれるということで「国民皆保険制度」といわれています。これは世界的にもとてもすぐれた制度で、その恩恵を受け日本人の平均寿命は世界的にも常に高いレベルで維持されているといえます。
歯科の分野においてもこの制度が作られた昭和30年~40年ごろは虫歯の洪水状態であった多くの人々が救われました。安価な費用で、最低限の痛みを止める処置が受けられたからです。歯の神経を抜く、歯を抜く、その後入れ歯を作ることもこの健康保険内で行うことができます。
しかしこの健康保険制度の下での処置は最低限のものであり、決して最新最善の治療法ではありません。歯科医療は日々進歩しておりますので、健康保険における治療は時代遅れであります。
そもそも、近年では虫歯を削ることや歯周病で歯を抜くことよりも、虫歯や歯周病にならないよう予防することの方が大切と言われるようになりました。
にもかかわらず、いまだにこれら予防処置のほとんどに健康保険を使うことは残念ながらできません。

★『丁寧』『慎重』『確実』な治療を目指しての完全自由診療
今の日本の健康保険では時間、経験、技術に対する評価はありません。 一本の歯の虫歯治療に、一時間じっくりかけるのと10分で済ませるのとで、その治療費に差が生じることはないのです。
赤字覚悟のボランティアであれば保険内でそういった時間をかけることも可能ではありますが、医院を維持していくのに必要な採算性を度外視するわけにもいかず、低い保険の評価の中では良質な医療を提供するのに限界があるといえます。
これが自由診療を選択された場合には異なってまいります。 治療にかける時間は、保険制度のルールにはとらわれず、あくまでもその歯にとって理想的な治療の行程に必要な時間をかけておこないます。
例えば虫歯治療の場合、虫歯の取り残しがないように『丁寧』に、歯を削り過ぎないように『慎重』に、虫歯が再発しないように『確実』にマイクロスコープを用い場合によっては薬剤やレーザーを用い、こうした虫歯一本の治療に対し、最低でも一時間から一時間半程度のご予約を確保させていただきます。 保険診療では何回かに分けざるを得なかった治療も集中的に来院回数を少なく配慮できます。
大切なのは、こうした時間の制約のない『丁寧』『慎重』『確実』といった治療を行うことで、
その歯を二度と再治療せず、長く持たせることが初めて可能になってくるという事です。
よく保険と自費の違いは『治療する部位や、詰めたり被せたりする材料の違いだけ』という誤った認識が蔓延しています。もちろん材料や使用する機器などが違うというのは事実ですが、こうした時間の要素も実は大きなウェイトを占めているということを皆さんに是非知っていただきたいのです。

長文お付き合いいただきありがとうございました。
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追伸

歯科保険制度の適用となるものは歯を削って詰めること、痛くなったら神経を抜くこと、だめになった歯を抜いて入れ歯を作ることなどの【治療】であります。
少し掘り下げて考えてみますと、この【治療】と記しましたことは実はすべて真の意味での治療行為ではありません。
治療であるならば病気が文字通り治らなければならないはずです。歯を削って詰めてもまた隙間から虫歯が再発するようでは治ったことにはなりません。ましてや、ぐらぐらになってしまった歯を抜くことは、当然治す行為ではなく、歯周病の治療とは言えないはずです。
義歯治療はよく眼科のめがねにたとえられます。
眼科で眼鏡治療とは決して言いません。
それは失われた視力をめがねで補うといった機能回復だからです。
これは裸眼視力を直接治す近視治療とはあきらかに異なるものです。義歯もまったく同じで、失われた歯の咀嚼能力を補うための機能回復であり、決して【治療】ではないのです。
削られた歯や失った歯は 風邪や骨折と違い 治癒という概念は存在しません。

私達は自分や自分の家族が受けたい歯科治療を常に考えます。
もっとも大切なこと、それは一度治した歯がずっといい状態で長持ちすることではないでしょうか。