メタルフリー治療
近年日本では、住環境や食環境、大気汚染などといった生活環境の変化に伴い、アレルギー疾患を持つ人が非常に増えていると言われております。
当院にも「金属アレルギーなので銀歯を外してほしい」と多くの方がご来院されていますが、中には、発症しているアレルギーの症状がお口の中の金属が原因であることに気が付いていない方もいらっしゃるようです。
お口の中の金属が原因の金属アレルギーは、必ずしもお口の中に症状が現れるとは限りません。むしろ、手足や全身など、全く関係のない部分に症状が現れることがほとんどです。
また、歯科治療の直後ではなく、金属を入れてから数十年を経て突然発症することも多いため、その原因がお口の中の金属によるものとはなかなか思いつかないのでしょう。
原因不明の症状に悩まされるというのは、精神的にも辛いものです。当院には金属アレルギーの検査するための機器も備えておりますので、症状に心当たりのある方はお気軽にご相談下さい。
歯科用金属が原因で引き起こされるアレルギーなどの主な症状
- 口内炎が頻繁にできる。
- 口角が切れたり、唇の周りに炎症を起こしやすい。
- 手のひらや足の裏に膿疱ができる。(掌蹠膿疱症)
- アトピー性皮膚炎や湿疹を発症する
- 慢性的な頭痛や肩こりがある
- 鬱、倦怠感、自律神経失調症など
当院で行っている金属アレルギー検査
パッチテスト
パッチテストとは、背中にさまざまな種類の金属の溶液を含んだシールを張り、2~3日後にそれぞれの部分の皮膚の反応を診ることで金属アレルギーがあるかを調べるというもの。金属アレルギーがある場合はその金属を張った部分が赤く反応しますので、どの金属にアレルギーがあるのかを調べることができます。
パッチテストの検査中(数日間)は、お風呂に入ることができませんので、通常、夏は行わずに涼しい季節に行います。
パッチテスト検査は当院でも行うことができます。ご希望の方はお気軽にご相談下さい。
ガルバニー電流検査:口腔内電流測定器(Oral Techtor)
「ガムやチョコを包む銀紙を間違って噛んでしまった時、キーンとしたイヤな感じがした」という経験したかたもいらっしゃるかもしれませんが、それも実は、ガルバニー電流の一つ。 「噛むとキーンとする」といった代表的な症状から、頭痛や不眠、イライラといった自律神経の乱れまで引き起こしてしまいます。
もちろん、根本解決のためにはお口の中の金属を取り除く必要がありますが、まずは現在の不調が金属によるものなのかどうかを判断する検査としてご利用いただければと思います。
ZRT TEST(脳や肝臓など全身に蓄積した有害重金属のレベルを検査)
有害重金属を調べる検査には様々な方法がありますが、有害重金属の種類によって血液に検出しやすいものと尿で検出しやすいものが存在します。つまり、血液と尿の両方を調べる必要があります。
当院で行うメタルフリー治療
現在の日本の保険制度では、残念ながら、歯科金属アレルギーに対して充分な治療を行うことができません。
もちろん、保険が適用される材料にも金属を含まないもの(プラスチック)はありますが、適用範囲が限られているほか、壊れやすい材質のため、噛み合わせが強い方の場合は不向きです。
金属アレルギーは一度発症してしまうと、その体質を改善するのは非常に困難と言われております。
既に発症してしまっている方はもちろんですが、具体的な症状が出ていない場合であっても、体内に金属が溶けだし蓄積しないように安全性の高い材料を選択されることをお勧めいたします。
虫歯治療
金属アレルギーがある方の場合、虫歯を削った後に入れるつめものや被せ物の選択はとても重要になります。
基本的にはパッチテストでアレルギー反応があった金属以外であれば使用は可能なのですが、今後のリスクを考えると、なるべく金属自体の使用を控えた方が良いでしょう。
皮膚科などの医療機関からの金属アレルギーの診断書があれば、健康保険内でも白い歯を入れることができます。
残念ながらセラミックは適用外となってしまいますが、レジンやハイブリットレジンは対応可能ですのでご相談いただければと思います。
【保険適用外】e-max(イーマックス)
従来のセラミックは強度が90MPaほどのものが一般的でしたので、噛み合わせが強い方の場合は割れてしまうなどの問題がりましたが、e-maxは強度が400Mpaほどありますので滅多に割れることはありません。
e-maxにはCAD/CAMシステムによりブロックから削り出すタイプのものと技工士が手でつくるタイプのものがありますが、当院のe-maxは技工士が手で作製するものを採用しております。
【保険適用外】フルジルコニア
現在使用されている歯科材料の中では最も高い強度(600~1,200MPa)を誇る材料ですので、力のかかる奥歯に使用しても割れることはありません。
しかし、ジルコニアはその強度の高さから人間の手で削ることが不可能なため、フルジルコニアの被せ物はCAD/CAMシステムによりブロックから削り出す方法で制作することなります。
【保険適用外】オールセラミック(ジルコニアフレーム)
表面にセラミックを焼き付けますので微妙な色合いも表現することができ、自然で美しい歯に仕上げることが可能です。
また、フレームにジルコニアを使用していることからe-maxよりも耐久性に優れ、前歯はもちろん、かみ合わせの強い奥歯にも使用することができます。
根管治療
一般的に根官治療を行った後には、歯の強度を保つために「コア」と呼ばれる土台を歯の中に挿入する必要があるのですが、保険治療の場合は大抵、金属でできた「メタルコア」と呼ばれるものを挿入することになります。
しかしながら保険で使用される金属はアレルギーが出やすいため、金属アレルギーの方はなるべく使用を避けたいところ。そこでおススメされるのが、グラスファイバーを使用した「ファイバーコア」です。
残念ながら保険適用が認められていないため自費治療となりますが、金属のコアよりも根が割れてしまう可能性が抑えられるため、歯を守るための治療法としても有効な選択と言えます。
インプラント
その歴史の長さや実績の多さから見ても信頼性の高い素材と言えますが、ごくまれにチタンに対してアレルギー反応を起こす方もいらっしゃいます。
そのような場合、当院ではチタン製のインプラントではなく、ジルコニア製のインプラントを使用した治療をおススメしております。
ジルコニアインプラントは、日本ではまだ認可がおりていないためそれほど普及はしていませんが、アメリカやヨーロッパなどの歯科先進国では米国食品医薬品局(FDA)の承認と欧州CEマークの認証を受けており、急速に広がっています。
入れ歯治療
部分入れ歯の場合
金属を使用しない部分入れ歯としては「ノンクラスプデンチャー」が挙げられますが、当院では数種類あるノンクラスプデンチャーの中でも「ミラクルフィット」という種類の入れ歯を取り扱っております。
しかしミラクルフィットの場合は後々の修理や調整も可能なため、長い目で考えるとメンテナンスにかかる費用も抑えることができます。
また、ミラクルフィットは残っている自分の歯を保護する設計になっているため、結果的に自分の歯を長持ちさせることができます。
総入れ歯の場合
保険適用内で作成可能な総入れ歯は基本的に金属を使用していませんので、金属アレルギーの方でもご利用いただけるかと思います。
しかし、保険内で定められた材料しか使用することができないため、使い心地や耐久性は必要最低限のものになってしまいます。よりクオリティを求める場合は、保険適用外にはなりますがジルコニア床の入れ歯を検討されるとよいでしょう。
ジルコニア床入れ歯とは、床の部分にジルコニア(セラミック)を用いて作製した義歯のことで、従来のコバルトクロムや白金加金で作製された義歯でアレルギーが出ていた方でも安心してご利用いただけます。
ジルコニアは人工ダイヤモンドと呼ばれるほど非常に高い強度を持っているため、金属床義歯のように床の部分を非常に薄く設計することができ、装着時の違和感や不快感を減らすことができます。
矯正治療
最近では、矯正治療に使われる装置(ブラケット)は従来のようなメタル製のものではなく、セラミック製の目立たないタイプのものが主流になってきました。
当院でも矯正治療に使用するブラケットは目立たないセラミック製のものを使用しておりますが、金属アレルギーをお持ちの方の場合、歯につける装置(ブラケット)だけではなく、ブラケット同士をつなぐワイヤーの素材も確認する必要があります。
通常、治療に使われるワイヤーは「ニッケルチタンワイヤー(Ni-Tiワイヤー)」というものを使用するのですが、この素材に含まれているニッケルは比較的金属アレルギーが出やすい物質なのです。
そこで当院では、金属アレルギーの患者様には下記のような装置を使用した矯正治療をご提案させていただいております。
ゴムメタルワイヤーによるマルチブラケット矯正
「ゴムメタル」とはトヨタグループの豊田中央研究所で開発された新チタン合金で、ゴムのようにしなやかな弾性を持ちながら剛性も持ち合わせているため、しなやかではあるが曲げることができないニッケルワイヤーの弱点を補う新素材として注目されています。
主成分はチタンであるためチタンにアレルギー反応がある場合は使用できませんが、比較的アレルギー反応が出にくい素材と言えるでしょう。
マウスピース矯正
治療に使われるマウスピースは柔らかいプライスティック素材でできており、金属を使用しておりませんので金属アレルギーの方でも安心してご使用いただけます。
マウスピース矯正にはインビザラインやクリアライナーなどいくつか種類がありますが、ぞれの装置にメリットデメリットがありますので担当歯科医師と相談しながらご自身のに合った治療法を選択するとよいでしょう。