歯髄再生治療
歯髄再生治療は、歯の神経(歯髄)が死んでしまった、あるいは抜歯が必要とされた歯を救うための、全く新しい治療法です。歯髄は歯の内部にあり、象牙質に栄養を与え、痛みを感じ取る重要な役割を果たしています。しかし、虫歯の進行や外傷などによって歯髄が損傷し、機能を失うことがあります。このような場合、従来は神経を抜いて治療を行う根管治療が主流でしたが、歯髄再生治療では歯髄幹細胞を用いて神経を再生させ、歯の健康を取り戻すことが可能です。
歯髄を抜いてしまった場合のリスク
もし歯髄を取り除いてしまうと、次のようなリスクが生じます。
- 痛みや異常に気づけない:神経がないため、虫歯や歯周病が進行しても痛みに気づきにくく、治療が遅れる可能性があります。
- 虫歯が進行しやすい:歯髄がないため、歯の自然な抵抗力が失われ、虫歯が進行しやすくなります。
- 見た目の悪化:栄養供給がなくなると歯が変色し、見た目が黄ばみや灰色に変わることがあります。
- 膿が溜まるリスク:根管内の不完全な治療により、細菌が侵入し膿が溜まることがあります。
- 歯が割れる:栄養不足によって歯が脆くなり、割れやすくなります。
歯髄再生治療のプロセス
歯髄再生治療は、次の3つのステップで進められます。
- 歯髄幹細胞の採取と培養
不要な親知らずや乳歯から歯髄幹細胞を採取し、これを約1か月間培養します。7~10歳の乳歯も使用でき、患者様自身の細胞を利用します。 - 歯髄幹細胞の移植
治療対象の歯から歯髄を取り除き、無菌処理した後、培養された歯髄幹細胞を移植します。この際、細胞の移動を促すG-CSFという因子も併用します。 - 歯髄と象牙質の再生
G-CSFの働きによって、血管の新生や神経の伸長が進み、歯髄が再生します。同時に、失われていた象牙質も徐々に再生されます。
歯髄再生治療のメリット
- 歯の寿命を延ばす
神経が蘇ることで歯に栄養が行き渡り、歯が割れにくく、健康な状態を長期間維持できます。 - 二次カリエスの予防
神経を抜かずに再生させることで、根管治療後に起こりがちな二次カリエス(再度の虫歯)のリスクを大幅に減らせます。 - 全身の健康に寄与
自然な歯でしっかりと噛むことができるため、消化や栄養摂取にも良い影響を与え、全身の健康維持に繋がります。
歯髄再生治療のリスク・副作用
- 治療期間が長い:細胞の培養や再生に時間がかかるため、治療は数か月を要することがあります。
- 費用が高額:特殊な技術を使用するため、治療費が高くなる傾向があります。
- 治療できる施設が限られる:歯髄再生治療を提供できる歯科医院はまだ少なく、施設の選択肢が限られます。
まずはご相談下さい
歯髄再生治療は、歯の健康を長く保つための新しい選択肢です。歯髄を失った場合でも、幹細胞技術を利用することで、歯を再び健康な状態に戻すことが可能となっています。もし歯の神経を取る必要があると言われた場合には、この治療法についてもご相談下さい。