睡眠時無呼吸症候群(SAS)

当院の「医科歯科連携」による睡眠時無呼吸症候群(SAS)治療

当院では医科歯科連携体制を構築しています。まずは提携しているクリニックの医科で「検査」を受けていただき、医師による「診断」が出て、その後当院で治療を開始できる体制となっています。

根本原因にアプローチする睡眠時無呼吸症候群(SAS)治療も

基本的に睡眠時無呼吸症候群の治療は、歯科では「スリープスプリント」「ソムノデント」「サブリンガルプレート」などによって気道が通るようにもっていったりする治療を行います。これらは「対処療法」的な治療となります。しかし当院では、検査の結果次第では、「根本原因」にアプローチする治療(かみ合わせの治療や、歯科矯正によって気道が通るようにする)にも対応しています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の潜在的患者数

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が一時的に止まったり、浅くなったりする状態を指します。英語ではSleep Apnea Syndromeと呼ばれ、その頭文字を取って「SAS」と略されます。日本では、潜在的な患者数は約300万人と推定されています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断基準

SASの診断基準には、睡眠中に10秒以上の無呼吸や低呼吸が1時間に5回以上起こることが含まれます。これらの症状が現れると、患者は日中の眠気や中途覚醒、倦怠感などの影響を受けることがあります。これらの症状が持続する場合、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の主な原因 

SASの主な原因は、上気道の一時的な閉塞や狭窄によるものです。これにより、呼吸の流れが妨げられ、睡眠中に無呼吸や低呼吸が発生します。肥満や咽頭組織の肥大、鼻や喉の解剖学的な特性の影響など、さまざまな要因が関与する可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群 (SAS)の恐ろしさ

睡眠時無呼吸症候群のリスク

1. 突然死

重症睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者の死亡率は健常者の「2.6倍」です。

2. メタボリックシンドローム

重症睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者の「49%」はメタボリックシンドロームです。

3. 交通事故・労働災害

重症睡眠時無呼吸症候群患者(SAS)が交通事故を起こす確率は一般ドライバーの「2.5倍」です。

4. 高血圧

・睡眠時無呼吸症候群(SAS)が高血圧の原因に。
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)の「約50%」は高血圧を合併しています。
・中年男性の高血圧患者のうち「30%」が睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療は高血圧にも効果があります。

5. いびき

・睡眠時無呼吸症候群(SAS)はパートナーのQOL(生活の質)にも影響があります。
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者の「90%以上」は習慣的にいびきをかく
・習慣的にいびきをかく人は糖尿病リスクが2倍です。
・習慣的にいびきをかく人は高血圧リスクが「1.5倍」にも。
・習慣的にいびきをかく人は心血管疾患のリスクが高くなります。

6. アルコール

飲酒は睡眠時無呼吸症候群(SAS)を悪化させます。

7. タバコ

喫煙者は睡眠時無呼吸症候群(SAS)リスクが高くなります。

8. 脳血管障害

・睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者は脳卒中のリスクが高くなります。
・CPAP療法は脳卒中の再発リスクを軽減します。

通常の呼吸(気道が通っている)

SASの呼吸(舌が沈み気道を圧迫)

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と全身疾患

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と糖尿病

SASの重症度が増すに連れ、糖尿病の合併割合が高くなります。SASを合併していると糖尿病の発症リスクが1.62倍になることが報告されています。(Am J Respir Crit Catr Med 2005;172:1590-1595)

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と高血圧

米国で一般住民を対象に行われた研究により、SASと高血圧には明らかな関連が示されました。4年後に高血圧を発症するリスクを調査した結果、SASによる発症リスクは、健常人の約1.4~2.9倍になるという研究結果でした。(Hypertension 2001:19:2271-2277)また高血圧の患者で、降圧剤などの薬の効果がでない状態を「治療抵抗性高血圧」と言います。 この治療抵抗性高血圧と睡眠時無呼吸症候群(SAS)が高率で合併することが明らかになっています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と心疾患

心房細動の発症頻度がSASを合併していない場合とSAS合併の場合と、2倍以上もリスクが高いことが報告されています。(J Am Coll Cardio 2007;49:565-571)別の研究では、重症SASの場合、SASではない人に比べて夜間の心房細動の発生頻度が4倍以上高かったと報告されています。(Am J Respir Crit Care Med 2006;173:910-916)

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と脳卒中

脳の血管が狭窄して詰まる脳梗塞、血管が破れて出血したりする脳出血は、後遺症として麻痺や言語障害が生じやすいとされています。睡眠時無呼吸症候群(SAS)重症例では脳卒中・脳梗塞発症リスクが3.3倍になることが報告されています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査

スクリーニング検査

睡眠時無呼吸症候群の簡易検査は、早期発見を目的としており、小型の機器を使用して、ご自宅で睡眠状態を測定可能です。当院では、睡眠評価装置「ウォッチパッド」を採用しています。

SpO₂センサをPATプローブに統合したUPATプローブ

ウォッチパットは、指先に装着したPATプローブで末梢の血流量を終夜連続的に測定します。また、SpO₂センサをPATプローブに統合しUPATプローブへとアップグレードしたウォッチパット ユニファイドは、より簡便に検査を実施いただけます。センサからの信号を、独自に開発されたアルゴリズムにより睡眠/覚醒や無呼吸低呼吸指数などを算出し、睡眠呼吸障害の診断に必要な情報をご提供します。

簡単に装着でき、病院・自宅でご使用いただけます

ウォッチパット ユニファイドは、2つのセンサを取り付けるだけで睡眠呼吸障害の検査が可能となります。また、セットアップ、データのダウンロード、およびレポート生成の操作も簡単に行え、医療従事者の作業効率を向上いただけます。

場所を問わず、信頼性の高い検査を提供します

ウォッチパット ユニファイドの睡眠・覚醒識別機能により、従来の携帯型装置で起こりえるAHIの過小評価に対する問題を改善します。この機能により検査を実施する場所を問わず、信頼性の高い睡眠呼吸障害の検査を可能とします。

タンパープルーフ(オプション)

ウォッチパット ユニファイドとタンパープルーフブレスレットを併用することで、個人認証機能を追加して使用いただけます。特に検診などで実施されるスクリーニング検査では代理検査などの問題をかかえています。ウォッチパット ユニファイドとタンパープルーフブレスレットを併用することでこれらの問題を解決することが可能となります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の簡易検査

自宅でも取扱い可能な検査機器を使って、普段と同じように寝ている間にできる検査です。手の指にセンサーをつけ、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があるかを調べます。多くの場合はまずこの簡易検査から行ないます。 当院では検査機器を有料でお貸出ししています。

機器の貸し出しについて

簡易的な検査機器を1~2晩お貸しします。自宅でこの装置を付けて眠っていただきます。さらに詳しく別診断する場合は提携医療機関にて入院検査をご紹介することがあります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)精密検査=PSG検査

簡易検査よりも詳しく、睡眠時の呼吸の状態を調べる検査です。終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査と呼ばれ、専門の医療機関に入院して行う検査です。体に多くのセンサーをつけますが、痛みはありません。いつも通りに寝ている間に検査は終了します。仕事などへの支障が少ないよう、仕事終りの夜に入院して検査をし、翌朝出勤前に退院できるよう配慮されている医療機関も多くあるようです。PSG検査の結果は、医師や専門の臨床検査技師などがそれぞれのデータを見て最終的に判定します。事前に、時間、持ち物、費用等はご確認ください。

歯科における睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療

睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、治療を行います。特に重症な方は、「医科」にて、「CPAP(空気を送り込む機械)」を使用して治療を行います。

ソムノデント MAS

患者様個々の歯列にあわせてカスタムメイドされた装置です。上下歯列にフィットするプレート部分とその形状で特許を取得した独自のウィング部分で構成され、装着時の顎位の動きを規制しながらも、患者様が自由に口をあけるこことができるように設計されています。上顎臼歯部には顎位置を微調整するためのスクリューが装備され、装着後の調整も簡単におこなうことができます。

SPP(スーパーパラタルプレート)

SPP(スーパーパラタルプレート)は、上の歯の根元に装着される装置で、上の歯の内側における左右の差を解消でき、舌が上の前歯の根本部分に自然に配置されやすくなります。装置は違和感を最小限に抑えるように設計され、表面は滑らかに研磨仕上げされていますので、ザラつきを感じることはありません。

口を閉じているとき、舌の先がスポットに軽く触れることが理想的です。しかし、時折舌が低い位置にあるか、喉の奥に寄ることがあり、これが舌の筋肉に影響を与え、姿勢が悪くなる可能性があります。さらに、食事時の咀嚼や正しい呼吸にも悪影響を及ぼすことがあるため、当院ではSPPを使用して、舌の位置を調整する治療を推奨しています。

SLP(サブリンガルプレート)

SLP(サブリンガルプレート)とは、日本歯科大学名誉教授の丸茂義二先生が考案された、歯ぎしりや食いしばり・睡眠時無呼吸症候群などを効果的にコントロールするための装置です。SLPはマウスピース型ではなく舌の下に入れて使用するタイプの装置ですので、睡眠時だけではなく、日中も装着したままで過ごすことができます。

睡眠時無呼吸症候群の大きな原因として、睡眠時に顎や舌が後退しすることで気道(咽頭腔)が狭くなり、呼吸が困難になってしまうということが挙げられますが、SLPを入れることで舌が上へ持ち上がり、前方へ出ると同時に下顎もわずかに前方へ移動しますので、結果、気道を確保することができるのです。また、舌の位置を正しい位置に修正することにより、食いしばりや歯ぎしりを減弱できる効果が期待できるほか、体の重心バランスが変わることで姿勢が改善されたり、唾液の分泌を促進することで虫歯リスクの軽減、ドライマウス防止に繋がる効果も期待できます。

FNAP

FNAPは、SPP、SLP、Michaelの効果をすべて備えています。24時間の装着で期待できる効果として、発音、咀嚼、嚥下障害の解消、呼吸促進、体幹強化、脳活動促進、追視機能向上、メンタル改善、顎関節症状の軽減、正常口腔機能の回復などがあります。口腔内を分析し、正常から逸脱した状態を修正することができる装置です。正常な口腔機能を取り戻すことで、口腔内の正常な動きが生まれ、不良な口腔内からは不良な口腔機能しか生まれないという原理に基づいています。装置は異物感をほとんど感じさせず、正常な口腔形態環境を目指して設計されています。口腔機能を阻害せず、正常な口腔機能を促進することが目的です。顎関節中心の骨格運動は、肉食のための動きであり、舌機能は必要ないため、正常な発育が妨げられます。正常な口腔内機能で筋格を正常に働かせることが装置の目標です。

「根本原因」にアプローチする治療

かみ合わせの治療

かみ合わせが深くなりすぎていて、口腔内から舌がのどの方に落ち込みやすくなり、その結果、無呼吸が誘発されているようなケースの場合、かみ合わせを調整することで気道が通りやすくなり、根本的に睡眠時無呼吸が改善されることがあります。当院では、先進の検査機器を使用して、気道の状態も確認し、精密な治療を行っています。

歯科矯正

不正咬合によって、口腔内から舌がのどの方に落ち込みやすくなり、その結果、無呼吸が誘発されているようなケースの場合もあります。そのような場合には、歯科矯正によって、気道が通りやすくなり、根本的に睡眠時無呼吸が改善されることがあります。経験豊富なドクターが治療に当たります。